2017年5月5日金曜日

新機種紹介その1『KL-CORONA』 ~再び3ドライバの頂点をめざして~

4/28より新発売しました3機種『KL-CORONA』、『KL-METEO』、『KL-SIRIUS』。

本日は3Way-3Driversの『KL-CORONA』の詳細をご紹介します!

■『KL-CORONA』の音作り。フラットな音色に、少しの低域をプラス。


KL-CORONAには、BAドライバの持つフラットな中低域表現に、ネットワークの工夫によりBAドライバが苦手な100Hz以下の低域をプラス。
心地よい量感を持った低域と、それに邪魔されないボーカルの繊細さにこだわったチューニングになっています。
BAドライバの苦手な100Hz以下の低域を確保するために、中低域のBAドライバを2Wayとして使用しています。

ただし、持ち上げたのはボーカルが含まれる帯域の直前です。
いわゆる「ボーカルをマスクするもやっとした低域」にしたくなかったため、
どの付近に低域のピークを持ってくるかは、かなり慎重に設計しました。

全体としては、弱ドンシャリ気味の塩梅ですが、聴き疲れのしないバランスに仕上がりました。

■3ドライバの魅力は、音作りの自由さにある!


6ドライバIEMが多ドライバと言われていたのも今や昔、ちかごろでは10ドライバ、
12ドライバは当たり前、ついには20ドライバに届きそうな勢いですね。

そんな中、3ドライバを作る意味ってなんなんでしょう?
一言でいうと、『音作りの自由が詰まっている』ことにあるでしょう。

『ドライバの数え方 ~そのIEMって何ドライバなの?~』でもちらっと写ってますが、
一口にBAドライバといっても様々な種類があります。

高域用に使うBAドライバだけでも7種類ほど、中低域に使うBAは10種類ほど、主要メーカーのBAでパッと思いつきます。

本来なら、これらのBAドライバを組み合わせると様々な構成のIEMができそうです。
しかし、たくさんのBAドライバをシェル内に詰め込むということになると、話は別です。

ユーザーの耳の形がそのまま筐体になる、カスタムIEMといえども筐体の容積には上限があります。
たくさんのBAを詰め込むことを念頭に置くと、おのずと使えるBAは小さいものが理想となります。
実際、最近の多ドライバの機種を見ると、高域に使われているBAは主に2,3種類じゃないでしょうか。

これが3ドライバのみを使うとなると、上記の制約が取り払われます。
ドライバだけでなく、ネットワーク部品を組み込むスペースが確保されるので、
素子にこだわったり、ネットワーク回路を複雑にしたり、ということも可能になります。



その結果、音作りの自由度が格段にあがり、3ドライバIEMが鳴らす音は実に多種多様になる…はずなのですが。

不思議なことに、この3ドライバの機種も構成が似たり寄ったりになってるんですよね(^^;
低域に使われるドライバは大体Knowless の CI22955か、Sonion の 38AM007M/8a が多いですよね。
もちろん、各社とも独自の設計を施したネットワーク回路を搭載しているのですが、
ほとんど手を入れていない帯域があることに気づきました…!
それが、今回の『KL-CORONA』をの中低域を2Wayにした理由です。
低域に使っているドライバも、KL-CORONAはKnowlesのDTEC30008というデュアルドライバを採用しています。

■ 低域~中域の表現を多様にしたい!~低域BAを2Wayにしたワケ~


私が気づいた一つのポイント。それは、低域用BAドライバが主に出力する20Hz~1kHzまでの特性が、
どれも似通っているということ。下の図をご覧ください。
これは、低域用に使われるBAドライバと、ダイナミックドライバの特性の一例を示したものです。




多少の差はあるものの、低域用BAドライバの多くは50Hz~1kHzあたりまでがフラットに出力されています。カーブが一直線になっているのが分かりますね。

これを、音響抵抗と呼ばれる小さな部品でピークを削っていき、特性を変えていくわけですが、
主に削れる帯域は1kHz付近です。


一方、ダイナミックドライバを使った製品はどうかというと、同じ帯域をさまざまなカーブを描いて出力します。
ダイナミックドライバは筐体込みで音作りをするため、上記のような特性から、筐体の設計によって2kHz付近の音圧を上げたりして全体の聞こえを整えていきます。

BAドライバはもともと補聴器用の部品として設計されています。BAドライバのこのようなフラットな出力も、補聴器を使用する方の症状に合わせてチューニングすることを前提に出力されているのではないでしょうか。


ただ、バスドラムや和太鼓など、打楽器の低いところをBAドライバで表現するには、全体の特性をガラッと変えなくてはいけません。

CORONAでは、これをネットワーク回路で行うことで、筐体設計などの開発費をかけることなく、
またBAドライバによる安定した特性を実現しました。

■再び3ドライバの頂点をめざして。中身に騙されないでほしい『KL-CORONA』の魅力。




『KL-CORONA』のもう一つ重要な点。それは、価格を抑えるということ。
昨今、カスタムIEMは20万を超える製品も珍しくなくなりました。
しかし、そういった製品だけでは、なかなか興味のある方々も手を出しづらいのではないでしょうか。

カスタムに興味はあるけど、価格的に手を出しづらい…そういった理由で二の足を踏んでる
方々に、くみたてLabから『KL-CORONA』という製品で一つの答えを出せたら。
しかも、3ドライバといえども、他のメーカーにはない、こだわりぬいた設計・音作りで。

おかげさまで、『KL-サンカ』は同じ3ドライバで皆様から高い評価をいただきました。
そのサンカを土台にして、くみたてLab4年間のノウハウを結集して、新たに最高の3ドライバIEMを
作ってみました。

少しカスタムIEMという製品に詳しい方は、構成をみて「似通った音があるんじゃないか?」
と思われるかと思います。
ただ、私は上記のような工夫から、今までにはない音作りをしてみたつもりです。
試聴会や、試聴機貸出サービスも今後予定していますので、ぜひ音を聞いてみてください!
そのうえで、『KL-CORONA』を愛機に選んでいただけたら幸いです。