2015年5月3日日曜日

『イヤホンばらして平気なの?』完結編。



ようやくJH13proのほうを何とかしたので、久しぶりの雑記帳的ネタはこいつで行きましょう。めちゃくちゃ長いですよ!


『イヤホンばらしてへいきなの?』とTF10くんの写真で締めくくった前回の記事。こいつの写真で終わらせたのは意味があったのです。というのも、
古いJH13proの低域用BAドライバは、TF10のものと同じなのではないか!
という仮説が僕の中であったのですよ・・・

ジャンクボックスから出てきたこいつを使って、JH13proを復活させてみたいと思います!IEMが集いし邪教の館へようこそ・・・

(※ちなみに、現行のJH13proの低域BAドライバは別のものになってますので注意!以下の記事は、freqphaseが採用される前のJH13proのみ当てはまります。)


おさらいですが、届いた時点のJH13pro. おそらく右のウーファーが死んでいます。


えい、っとフェイスプレートからぺきぺき割ります。緑の絶縁塗料が塗ってあるのが中低域を担当するDTEC、下のドライバが死んでると思われるJHA-XBとある特注Sonion社製ドライバ。DTECのほうはJH-3Mと刻印されており、こちらも特注のKnowles社製のドライバ になります。
BAドライバを製造している会社で有名なSonionとKnowlesですが、この2社の特注ドライバをふんだんに搭載してます。ちなみに、高域担当のDFK?も特注です。



JHA-XBの半田タップの間をよく見ると、小さな穴が開いているのがお分かりでしょうか?

これは"Tuned vent"といって、低域の量感を増やすためにBAの筐体に空けられたベント(空気孔)です。UE-XXXにも、おなじくあいています。

ただし、外見が同じでも、インピーダンスや特性が違ったりして必ずしも同じドライバとはいえません。Sonionのラインナップに「33AJ008/i」という同じような外見のドライバがありますが、こちらはJHA-XBともUE-XXXとも違います。もしや?と思ったそこのあなた、残念でした。

ではなぜJHA-XBとUE-XXXがおなじドライバと考えたのか?それは外見の特徴がそろっているのもそうですが、JH Audioを創設したジェリー氏が、Ultimate Ears在籍時に開発してたのがTF10だったからです。同じ人が作ったIEMならば、同じような部品を使って音作りをするのではないか?


緑がUE-XXX、黄色が正常と思われるJHA-XB、赤が故障品。
JHA-XBのスパウトにはフィルタが詰まっており、これが高域を減衰する役割を担っているので(つまりローパスフィルタ)、現状では全く別物に見えますが、緑と黄色のグラフの20~50Hz付近を見てください。いい感じにそろってませんか?
ここからも、同一のBAではないかと推測されます。

ところで、故障品と思われるBAからも音が出力されてますね。


故障した右chをばらしたときに、シェル側に黄色い配線材がとりのこされました。もしかして内部で配線が途切れていてなっていなかったのかもと思い、念のために計測してみましたが、出音があるということは故障していないのか?


こちらが故障品のスパウト部のアップ。黄色い綿みたいなのが詰まっているのがお分かりでしょうか?これがハイカットの役割を果たすフィルタです。これを取り出して、UE-XXXのほうのスパウトに詰めてみます。


黄色が正常のJHA-XB、赤が故障品、緑がUE-XXX.

なんとUE-XXXのf特が壊れてると思われるJHA-XBの方にそろいましたw

なんということだ・・・なんということだ・・・

これは、スパウトに詰まったフィルタが悪さをしているのではないか?
いったんUE-XXXは置いといて、再度JHA-XBのほうに
少しずつフィルタの欠片をつめて調節していきます。


赤が正常のJHA-XB、緑が故障品と思われていた方。

おおおお、揃いました!
なんだ、BAドライバ自体は壊れておらず、スパウトにつめたフィルタの劣化と配線の故障が原因だったのか、と一安心。さて、音導チューブの処理をして、シェルに詰めれば見事に復活です!







念のために、こちらも特注BAドライバであるDTEC(Knowles社製)のf特も測っておきましょう。データ採りもしたいですしね。









赤が左chのJH3-M. 緑が右のJH3-M.

おまえもこわれてるんかい!!!!!!









あああああああ、どうしましょう。この時点でだいぶ気力が萎えました。
先ほどからDTECと紹介してきましたこのドライバ、Knowles社製ではあるんですが、
先述したとおりラベルが「JH-3」となっていてこちらも特注です。
特注のドライバが壊れている以上、もうどうしようもないのか・・・



スッ・・・

ジャララ・・・

ジャーン!!!!


まだだ、まだ終わらんよ!!!!

中国から取り寄せた出所不明のJH3-Mを使って、直していきます。
ここまできたらなりふり構ってられんよ・・・
なんせ出所不明なのでマッチングを検査します。


赤が左のJH-3M、緑が出所不明のJH-3M.黄色が故障品です。なんとかよさげな個体が見つかったのでこいつを採用。

最近お気に入りの薄いライトパープルのシェルに入れました。

緑が左ch、黄色が修理した右。赤はお客様からお借りしたJH13pro.まぁこれなら直ったといっていいかな。いやぁ、長かったです。

さて、ここからはシェルの仕上げ。楽しい時間が始まります。










紫の彗星で仕上げてみました。自分用なので、実験的に新しいデザインで・・・


苦しめられたBAドライバもばっちり見えます。

まとめですが、このJH13pro、前のオーナーさんが落下かさせたかなんかで出音がおかしくなったんじゃないでしょうか。落下の際、ドライバの配線が切れたのかもしれません。あと、フィルタの劣化もあったので、経年劣化も否定できません。

結局、右chは二つのBAドライバがおかしかったわけです。中古品のリスクが詰まった物でしたねw
私のようなトラブルを楽しめるおかしな人の手に渡ったのが幸いでした。

ということで、中古品はトラブル楽しめる人向けだよ!という強引な結びで本稿を終えましょう。お付き合いありがとうございました。よいGWを!


【速報】 リペアから1ヶ月。またマッチングが崩れてきた。中古リペアに終わりは無い模様・・・