2012年12月31日月曜日

Mage-K:型取り編

カメラが壊れたので、しばらくは撮り溜めしていた写真で記事を。
インプレを自分で採る記事を紹介中ですが、ここからは
インプレを使ってIEMを作る工程をば。

もともと、84さんのインプレを受け取るきっかけになったのは、
Mageの改造をやらせてくださいと申し出たことでした。
Mageは国内でもレビュー記事がたくさんある人気機種ですが、
構成はCI*2+TWFKというもの。低域を抑え目にしたい、
ドライバを追加したい、という要望なのですが、どのように調整していきましょうか。


インプレは硬化時に一回り縮むので、適当な形に切った後に
ロウソクでコーティングしています。溶かしたロウソクにくぐらせるだけ。
これをさして「ロウソクフォンデュ」といいます。


インプレを最終的なシェルの形まで加工してシリコン型を採るのが
メーカー流らしいです。UEはまずインプレそのままの型をとり、
その後インプレを加工してもう一回型を採ってましたね。
最初の型は何に使うんだろう・・・?


僕はレジンでコピーをとって、それを加工していきます。
インプレをざっくり切っているのは、「しろ」を採るためです。


インプレコピー。こっちの方が表面処理がやりやすいです。


ここからでシェルの形を出していきます。表面は、タミヤの
ラッカーパテなどで凸凹を埋めて、滑らかにしていきます。


最後にサフを吹いて、369樹脂でコーティングして表面処理は終了。
369樹脂で厚みを出して、フィッティング調整をしています。
高さをやたら出しているのは、粘土に埋めて
オス型を固定するためです。


シリコン型から飛び出している部分が、粘土に埋まっているところです。
イメージが伝わりましたでしょうか?



これを元に型をとって、シェル作成用のシリコン型が完成。
ちなみに、丸い型を採りたい場合は、スプレー缶のキャップなどを
使うと丸い型をとれます。これはギャッツビーかなんかの。


シェルは369樹脂を使って作ります。
カナル部の空間が確保しやすいのでこんなTWFKの配置も可能。

さて、Mage改、84さん命名「Mage-K」ですが、今暫定版のやりとりをしています。
中域の改良に取り組んでますが、ネットワークで改良するか、
TWFKのチューブを長くするか二通りの調整方法がありそうです。

みなさん、来年もよろしくお願いします。

2012年12月18日火曜日

自分でする?改造・修理編

独立の記事にするには足りない小ネタを。

①コネクタのすっぽ抜け


UE型といわれるコネクタを採用するIEMメーカーは多いです。
そのUEがUE900でMMCXを採用したので、業界のスタンダードは
MMCXになっていくのかな?とも思ってますが。
今回お借りした84さんのWestone3*6ですが、左のシェルのコネクタは、
メスピンがシェル内に脱落している状態でした。


今回はコネクタ部のプラスチックを切開して、ピンを取り出しました。
取り出す際は、0.5mmくらいのスズめっき銅線をかぎ状にまげて、
この先に内部配線を引っ掛けてとりだします。
この方法だと、コネクタ部を破壊するので、コネクタを作り直さなければなりません。


しかし、黄色の所に直径3~4mmくらいの穴をあけ、そこに
精密ドライバなどを突っ込んでピンを押し返す方法もあります。
完全にピンがソケットから脱落している場合はコネクタ側から取り出す必要が
ありますが、ちょっとずれてるくらいならこっちで大丈夫。
爪楊枝を使って、エポキシ接着剤をピンの根元に塗って固定しておきます。
開けた穴は、ホットボンドでもUV樹脂でもお好みのもので埋めておきます。
ココなら目立たないし、フィット感にもさほど影響が出ません。

②ESケーブル改造・MMCXコネクタに


一部でおなじみESケーブル。これをMMCXに改造してみます。
何の罪もないコネクタ部をちょきっとな。


コネクタはL字を使います。これだと取りまわしが最短に出来ます。
ただ装着が少し難しくなりますが。


このESケーブル、拠り線ですが、線材の芯にケブラーが入ってます。
だから柔軟だけど断線に強いのですね。3年前にUMから送られてきた
ESケーブルを再利用しましたが、断線等は起きてないようです。
ケブラーごと予備はんだ。はんだ付けした線材をペンチなどで潰して細長くします。



予備半田が終わったら、各種スリーブを通しておきましょう。
焦ってやると、スリーブを通す前にピンをはんだ付けしちゃいますよねw
線の先をペンチで潰したのは、MMCXのホットの受け溝に通すためです。
ピンにははんだ付けせず、コテをあてて予備半田を溶かす要領ではんだ付けします。


完成。識別カラーはチラ見せがカッコいいと思う。
ご覧の通りかなり最短な取りまわしになります。
メスコネクタの固定角度を工夫しないと、人によっては取りまわしし辛いかも。

③MMCXメスの固定

ツイッターで、UMにMMCX仕様で頼んだら、一発で
コネクタがシェル内に陥没した、という方が居ました。
MMCXは「パチン」というスナップ感がロックの証なので、
音がしないとついついぐりぐり押し込んでしまいがちです。


このように、MMCXメスのお尻側まで樹脂がかぶってると安心です。


それと、左の写真のようにセンターピンの根元も樹脂で覆っておいたほうが安心です。
完璧なのは、先端まで樹脂に埋まってることですが・・・
右の写真は全然樹脂にうまってませんね。
いかん、危ない危ない危ない・・・


UEコネクタ破損などでリシェルに出そうと思っている方。
どうせリシェルに出すのなら、自分で治してみる事にチャレンジしてみては?
失敗してもメーカーに送ればいいわけですから、気軽にやってみましょう。

2012年12月9日日曜日

第2回 SonionドライバGB・ドライバ到着!

10/20に参加者募集が始まった第2回Group Buyですが、
12/9にドライバが到着しました! 今回のGBで購入したのは、

・高域用に44A004
・中域用に2389、2354
・低域用に38AM007a/M
・サウンドダンパ各種(白、緑、赤、茶色)

①44A004


今回最小のBAドラ、44A004 。いやほんとに小さい。
右の写真はTWFKとの比較。DTECとかじゃありません!
これで4ドラ状態w 方耳20ドライバとか作れそうだな・・・

②38AM007a/m


1964-V6やUnique Melody PP6とかに採用されているという
中低域ドライバ。一見すると33A007にベントが空いてるだけのよう。
ただ、ポートロケーションが違います。1964Earsなど
各メーカーの特注品は、ポートロケーションを真ん中に揃えてるのではないでしょうか。
音は結構違うらしいです。鳴らしてみるのが楽しみ。


左から38AM007、33A007、Knowles DTEC。そっくりですが、
やはりポートの造型が微妙に違います。音は結構違うそう。

③2354、2389


おなじみ2389。今回はフルレンジ?の2354もあわせて購入。
2354はカナルワークスのフルレンジ4発で使用されているかも。
ユニバーサルでは結構使用実績あります。Final Audioとか。


真ん中のタップがベントされてますが、まさか2389のセンタータップの
はんだを吸い取って2354でござい!、ってことじゃないよねw
これも音を聴いてみるのが楽しみです。


さて、これらを使ってIEMを造りたいところですが、どういう構成にするか
結構迷う。CIとあわせて使いたいんですが、MouserとDigikey両方とも
CIが在庫切れで、一月中旬以降まで待たないといけないとのこと。
あれ、ついさっきCI買ってたじゃないの、って話ですが
あいつらはもう使い道が決まってまして・・・。

44A004はどうしようかな・・・中途半端な数なんで、Mage-Kにでもぶっこんでみようか。
年末からお正月にかけて楽しい工作ができそうです。


I love Sonion !


682さんはじめ、GBに参加された皆さんありがとうございました。

2012年12月2日日曜日

音導チューブ長さとフィルタ位置

気の利いたタイトルが思いつかなかったのでタイトルそのままw
twitterとかスレで「チューブの長さやフィルタ位置で全然音がかわるよ!」
ってレスを結構頂いたんですが、「うっそだー?」と正直思ってました。すみません。
そこで、これを確かめるべく、ちょっと実験をしてみました。


使用するドライバはSonion2389 。なんか1個余ってたからw
チューブ内径は2.0mm 。Westoneで購入したチューブ。
で、最初は0mmから始めます。

ところで、今回はチューブ長さとフィルタ位置という、完全に自作erにしか役に立たない
情報かと思い、記事を読むのやめようとしたそこの貴方。
読んでいけば分かりますが、特性が結構変わる事がわかります。
このグラフを参考に、メーカーにフィルタ位置やチューブの長さを
指定してみては?・・・調整結果に責任は持ちませんがw


緑は10.0mm
緑は25.0mm
0.0mm~10.0mmで、3kHzの山はあまり動きません。
ただ、6kHz付近と10kH以降はかなり違います。
音導チューブを0.0~10.0mmくらいの長さにするのはあまり現実的では有りませんが、
高域のピークが中域側にずれてくるのが傾向としてありそうです。

15mm~25mmくらい。現実的長さとしては10.0~20.0mmくらいでしょう。
ここではかなり傾向が変わってきますね。
まず、あまり変化の無かった3kHz付近の山も動いてきます。
さらに、6kHzの山は4kHz付近まで移動し、3kHz~6kHzにあった谷が
浅くなってきます。これは結構な変化です。


25.0mmだと、こんな風にシェルから出ちゃうのでw、あまり現実的ではないですね。

さて、2389についてもう一つ試したいことが。こいつは実はUE-highではないかと
自作界隈やカスタムIEMマニアの間では噂されてきました。今回それを検証してみましょう。
音導チューブは10.0mmで測定。


うーむ、かなり近い。しかし、これだけで同じといってよいものか・・・。


ところで、2389にはCentertapなるものが付いています。中央の半田タップの事。
UE-highはこのCentertapが使われてるんですが、写真のように2389の
Centertapを使うとどうなるでしょうか。


これは完全一致でしょう。ちなみに、UE-highの右側のタップを使って2389との比較も
してみたんですが、これも一致。スクショ取り忘れましたがw
ここに、「Sonio2398=UE-high」の噂は真実であると証明された?

次に、チューブ内のフィルタ位置がどれだけ波形に影響を及ぼすのか検証します。


シェルの音導孔を起点として、ドライバギリギリまで行ってみます。
チューブの長さは25.0mm 。
緑は10.0mm
緑はドライバギリギリ。
フィルタレスで計測していたときと音量などは変えてません。
フィルタはコレだけ変わるのですね・・・。
しかも、フィルタの位置をドライバに近づけていくとピークが増えたりずれたりします。
これだけみると、フィルタ位置の方が、波形に与える影響はチューブ長さより大きい?

どんどんドライバに近づけていくと、7kHz付近の山が消えてしまい、
その代わり10kHz以降に大きい山が出現しました。

うーむ、ドライバに近づけると高域にピークが発生するのが悩ましいですね。
逆ならシェルに詰めてからでも調整しやすいんですが・・・w

まとめると、

・チューブを長くすると、特に6kHz以降のピークが中低域側にずれる。

・フィルタの位置をドライバに近づけていくと、5k~10kHzのピークを
減らす事ができるが、10kHz以降のピークは大きくなる。

・2389とUE-Highは同一のもの。

自作erやこれからカスタムIEMをオーダーする人の何かの参考になれば幸い。