2015年5月8日金曜日

『KL-カノン』、『KL-カノン・スイッチオプション』・セルフレビュー ~スイッチ・ギミックによる全く違う3種の音~

今年もやってきました春のヘッドホン祭2015.
くみたてLabも参加しますよ!今年もよろしくお願いします。

さて、「一番フラットなのはどの機種?」「低域が強いのはどれ?」「モニタ寄りの音ってあるの?」
と弊社の製品についてお問い合わせをいただく機会が増えてきました。
そこで、ヘッドホン祭当日まで、くみたてLabの二年間で製作を続けてきた機種を振り返る、
セルフレビューを上げて行きたいと思います!


第3弾は『KL-カノン』・『KL-カノン・スイッチオプション』です。

【お客様によるレビューはこちらです。】
『KL-カノン・スイッチオプション No1』『KL-カノン・スイッチオプション No.2』『KL-カノン・スイッチオプション No.3』
『KL-カノン・スイッチオプション No.4』『KL-カノン・スイッチオプション No.5』 
『KL-カノン No.1』『KL-カノン No.2』『KL-カノン No.3』  


『KL-カノン』は、くみたてLabが二人体制になってからその設計がスタートしました。
うまし君こと山崎君に、最初の仕事としてやってもらったのがカノンの設計でした。
カノンの下敷きになったのは、彼がまだ学生だった頃にポタ研で展示していた試作機です。


試作機ではむき出しになった抵抗を変えることで低域の量感を変えていました。
面白いアイディアだったので、「音を変えられるギミックを搭載したら?」という話になりました。


当初は「Mage-K」のように、スイッチでウーファーのBAドライバを切り替えるギミックを考えていたようです。これはこれで面白かったんですが、さらに進んで「スイッチによってドライバ数と音を切り替えられるギミックはどう?」と、まだ当時誰もやっていなかったことを実現する方向で開発の方向がまとまりました。


KL-カノン
・4Driver 3Way
・インピーダンス 9Ω

スイッチはオプションとして用意することにして、ひとまず4ドライバのカノンを2014年のポタ研・冬で発表。スイッチによるドライバ数の切り替えを思いついたは良いんですが、スイッチ部品やそれを保持するパーツを作るのにも苦労しました。結局、スイッチオプションはTRIOの際に力を借りた「Mr.X」にそのパーツ設計をお願いして実現しました。設計開始からちょうど1年後のことでした。


 KL-カノン・スイッチオプション
・6Driver4Way×2、4Driver 3Way
・スイッチによる、4ドライバ、6ドライバ(フラット)、6ドライバ(低域増大)の切り替えが可能

4ドライバのカノンは、中域の存在感が特徴的でした。低域の量感はそれなりにあり、不足気味というほどではありません。 音場も横に広く、狭めに設計することが多い自分には新鮮でした。初めてその音を聴いたとき、「お、こんな感じの音作りをするのか」と感動を覚えた記憶があります。カスタムIEMとしては珍しい音作りだったので、ユニークな製品になるだろうなと期待しました。

ところが、このカノンもまた、不遇の時代を迎えるんですよね(笑)
ヘッドホン祭2014春に参加以降、 サンカやアカラ2014が少しずつ注文が入るようになりましたが、
カノンは余り注文が入りませんでした。設計者としてはさぞかしつらい時期だったでしょう。
しかし、そこで投げ出すことなく、なぜカノンの音が評価されないのかと考えることを彼は続けました。
この根性が、後述するカノンの人気爆発につながったのではないでしょうか。

まず、カノンの高域の繊細な質感は、カスタムIEM版では音導管を掘り返すことで実現しています。
サンカの金属音導管と同じような発想なのですが、カノンの場合は2つのドライバについて掘り返す必要があるので、その作業が複雑です。

試聴機では、この掘り返しが再現されていなかったので、高域が曇った感じに聴こえていたようです。つまり、カノンの音が正しく伝わっていなかった可能性があるのです。

次に、スイッチオプションを搭載したバージョンを後日発表するとしていたので、お客様もその登場を待っていたのではないでしょうか。スイッチオプションの試聴機がきちんと用意できたのは2014年秋のヘッドホン祭で、カノン・スイッチオプションの発売はその2ヶ月後のポタフェス2014冬になりました。





 すると、ポタフェスでブースにお越しいただいた方々の評価は上々。その後、爆発的な受注につながりました。設計から1年、苦労と苦悩が報われた瞬間だったでしょう。

スイッチオプションでは、ノーマルのカノン4ドライバの状態と、低域をブーストした6ドライバの状態、低域を減らし、よりフラット傾向に近づけた6ドライバの状態があります。同じ6ドライバでも、低域の量感の調整ができるのは、ドライバの駆動に秘密があります。
低域をブーストした状態は、いわゆるドンシャリの傾向が強くなり、ノリのよい音を鳴らしてくれます。逆に低域を減らしたフラットの状態では、曲こそ選ぶものの、クラシック等の繊細な高域表現や空間表現が求められるジャンルでは、とてもマッチします。

IEMを使うお客様自信が、自分の好みやその日の気分に合わせて音を調節することが出来るギミック。音作り以外の楽しさ、製品の価値が詰まったのが、「KL-カノン・スイッチオプション」といえましょう。

カノンのレビューは以上です。次回は、チューニングサービスの二機種、「TF10-KAI」と「SE530-KAI」のレビューです。こちらもよろしくお願いいたします。