2015年5月6日水曜日

『KL-サンカ』・セルフレビュー ~最高の3ドライバ機をめざして。~

今年もやってきました春のヘッドホン祭2015.
くみたてLabも参加しますよ!今年もよろしくお願いします。

さて、「一番フラットなのはどの機種?」「低域が強いのはどれ?」「モニタ寄りの音ってあるの?」
と弊社の製品についてお問い合わせをいただく機会が増えてきました。
そこで、ヘッドホン祭当日まで、くみたてLabの二年間で製作を続けてきた機種を振り返る、
セルフレビューを上げて行きたいと思います!


第2弾は『KL-サンカ』です。

【お客様によるレビューはこちらです。】
KL-サンカ No.1KL-サンカ No.2KL-サンカ No.3KL-サンカ No.4
KL-サンカ No.5KL-サンカ No.6KL-サンカ No.7KL-サンカ No.8
KL-サンカ No.9KL-サンカ No.10KL-サンカ No.11
KL-サンカ No.12KL-サンカ No.13 


「KL-サンカ」は、事業開始発表後に初めて参加したイベントであるポタ研2013夏で展示しました。展示企画として、「CI-EDコンテスト」という全く同じドライバを使って3ドライバのIEMを作るというコンペを開催したので、それに出す作品として設計を進めました。
 
 
コンペの名前通り、サンカには「ED29689」というBAドライバをツイーターとして1機、「CI22955」というBAドライバをウーファーに2機搭載しています。
合計3ドライバなわけですが、これはIEMの基本的な構成といえるでしょう。各メーカー、3ドライバ機のモデルがラインナップの中に1つはありますが、基本的な構成の中にどのメーカーも自分たちの音作りの色を出そうとしているように思います。


KL-サンカ
・3Driver2Way
・インピーダンス:9Ω

ただ、どうしても構成が似通ってくるので、実際のところ差別化はかなり難しかったりします。
まずBAドライバの選定で音の方向性が大きく決まり、後はネットワークと音響抵抗の選定で微調整をしていく、というところでしょうか。

サンカでは、他のメーカーの3ドライバ機と差別化すべく、他が余りやっていない音響設計によって独自の音を出そうと工夫しています。
具体的には、ウーファーのBAドライバに接続した、L字型の音導管と、ツイーター側のBAドライバの音導管に接続した金属の音導管です。



サンカをよく観察すると、ウーファー側の音導管がL字に曲がっているのが分かると思います。これは、音導管を曲げることでの高域の減衰を狙い、ちょっとしたローパスフィルタとして作用します。CIの持つ高域のピークを削ることで、ツイーターのBAが出す音に影響の無いようにしています。

次に、ツイーターの音導管についた金属管。これはツイーターBA単体では出しにくい10kHz以上にピークを作り出し、高域にキラキラとした質感を与えることを目的としています。



また、ネットワーク部には高精度のコンデンサや抵抗を使い、細部にもこだわって設計しています。

音の傾向としては、アカラよりも低域と高域のメリハリを強くし、聴いていて楽しいことを主眼においています。CI独特の、量感のある低域を存分に生かしながら、高域もそれに負けないよう目立たせる工夫を、音響抵抗の選定や音導管の工夫で実現しています。

基本的な構成だからこそ、何か一工夫して独自の色を出す。「KL-カノン」でのスイッチオプション、「TRIO」での低域コントロールなど、その後のギミックにつながるような発想だったのかなぁ、と設計から2年後の今なんとなく思います(笑)

とにかく「3ドライバとして最高のものを作ろう」と設計し、自信をもってこの「KL-サンカ」と一緒に事業をスタートさせました。

ところが、これが最初全然売れなかったんですよね(苦笑)
それも当たり前の話で、突然出てきたメーカーが「最高の3ドライバだ!」といったところで眉唾ものだし、そもそも試聴がしにくいカスタムIEMですから、皆さんから注目をいただきながらも様子見、という状況が長らく続きました。10月の事業開始から半年で3つくらいしか世に出なかったんじゃないかな・・・

そんな状況を一変させたのが、去年の「ヘッドホン祭 2014春」でした。くみたてLabとして始めて参加したヘッドホン祭だったんですが、カスタムIEM版と特性がほとんど変わらない試聴機が完成したので、そこで改めて来場された皆さんに音を聴いてもらえました。結果は好評で、ブースで直接感想や応援の声をかけていただけたのはとても嬉しかったです。




ヘッドホン祭が終了してから、サンカのご注文をいただくようになり、事業も徐々に上向きになってきました。くみたてLabの最序盤は、このサンカによって支えられてきました。ありがとう、サンカ。

さて、レビューの内容がそれてきたのでこの辺で締めくくります(笑)。お付き合いありがとうございました。
次回は、 二人体制になってからの初めてのIEM、うましくんこと山崎君が初めて設計した「KL-カノン」、「KL-カノン・スイッチオプション」です。こちらもよろしくお願いします。