2015年5月6日水曜日

『KL-アカラ』・セルフレビュー ~同じ構成で3種の音作り~

今年もやってきました春のヘッドホン祭2015.
くみたてLabも参加しますよ!今年もよろしくお願いします。

さて、「一番フラットなのはどの機種?」「低域が強いのはどれ?」「モニタ寄りの音ってあるの?」
と弊社の製品についてお問い合わせをいただく機会が増えてきました。
そこで、ヘッドホン祭当日まで、くみたてLabの二年間で製作を続けてきた機種を振り返る、
セルフレビューを上げて行きたいと思います!


第一弾は『KL-アカラ Listening』、『KL-アカラ Stage』、『KL-アカラ2014』の3機種です。

【お客様によるレビューはこちらです。】
KL-アカラStage No.1KL-アカラStage No.2
KL-アカラ2014 No.1、 KL-アカラ2014 No.2KL-アカラ2014 No.3
KL-アカラ2014 No.4KL-アカラ2014 No.5KL-アカラ2014 No.6
KL-アカラ2014 No.7KL-アカラ2014 No.8


KL-アカラ Listening
KL-アカラListening

・3Driver 2Way
・インピーダンス 14Ω
KL-アカラ Stage


KL-アカラStage

・3Driver 2Way
・インピーダンス 12Ω

KL-アカラ2014
KL-アカラ2014

・4Driver 3Way
・インピーダンス 5Ω



じつは、くみたてLabが一番最初に設計したIEMがアカラで、事業開始の発表前からオリジナルIEMとして設計してました。2年前のヘッドホン祭に視聴機を持っていってますね・・・


くみたてLabは、このアカラシリーズから始まったといえるでしょう。

アカラシリーズのコンセプトを一言で言うと、『フルレンジのBAに、ウーファーやツイーター用のBAを足す』ということになります。シングルBA機に採用されることの多い『ED29689』というBAドライバに、StageとListeningではウーファーを、2014にはウーファーとツイーターを足しています。

ウーファーには当時あまりなかった物理的なローパス機構をかぶせて、フルレンジで鳴らしているBAドライバの帯域に被らない様に工夫しています。画像は試作段階のものですが、現在はローパスを利かせつつも音圧を損なわないような設計になっています。



StageとListeningは、事業開始発表後最初のイベントだったポタ研2013夏でメイン展示しました。
この2機種は構成が全く同じで、フルレンジの『ED29689』に、物理ローパスでハイカットした『38AM007』というウーファーを使っています。
違いはネットワーク回路のみで、フルレンジとウーファーのインピーダンスを調整しています。ネットワーク回路だけで、二つの異なった音が出せるのだということをアピールしたいという思いもあります。

KL-アカラ Listening

「KL-アカラ Listening」では、フルレンジには「BAドライバのハイ上がり」で実験した現象を取り入れ、通常より高域の音圧が上がるように調節しています。
ウーファーにも、量感のある低域をだすBAドライバを配することで、フラット~ややドンシャリな音質を目指しています。個人的には、このバランスが1番聴く音楽のジャンルを選ばないと思うので、万能選手型のIEMに仕上がっていると言えるでしょう。


また、ネットワークによりIEM全体の音圧を下げて、アンプなどを使用する場合にもギャングエラーに悩まされること無く音量が取れるようにしています。

BAドライバ数の多いカスタムIEMでは全体のインピーダンスがどうしても低くなってしまうので、アンプを使うと小ボリュームでも大音量で聴けちゃいます。ポータブルアンプで使われているボリュームには、小ボリューム時に「ギャングエラー」という左右のボリュームが揃わない現象がままあります(当時のものですけどね。今はだいぶ精度が高くなってるみたいです)。

「KL-アカラ Listening」は通常のカスタムIEMでは大きすぎるボリュームポジションでも、適切な音圧で聞けるわけです。「Listening」には、音楽鑑賞そのものを楽しむ意味と、ポータブルアンプやDACなどを組み合わせて自分の構成で音楽を聴く楽しさ、その両方をこめています。


KL-アカラ Stage

「KL-アカラ Stage」は、フルレンジのインピーダンスのみを上げ、ウーファーにより多くの出力がなされるように調節しています。

ウーファー用BAの持つ弾むような低域を存分に生かし、街中や駅のホーム、それこそステージ上のようなラウドな環境でも低域がきちんと聞き取れるように調節しています。また、全体のインピーダンスも低いため音量もとりやすく、プレイヤー直挿しでも十分な音量が取れます。全モデルの中で一番低域の強いモデルがこの「KL-アカラ Stage」といえるでしょう。

騒がしい環境でも十分な低域を楽しめるよう、またステージパフォーマーにも使ってもらえたらなぁというふわっとした思い、そういったものが「Stage」にはこめられています。

KL-アカラ2014

最後に「KL-アカラ2014」。2014年に入りはじめて参加したポタ研冬で初展示。2014とは、単純に年号のことなんです(笑

「KL-アカラ2014」は、先の「KL-アカラ Listening」、「KL-アカラ Stage」の構成にツイーターを追加し、4Driver-3Wayに再設計したことです。高域の音圧を更に持ち上げ、低域、中域、高域すべての帯域で十分な音圧が得られるようにしています。

高域の質感を左右する帯域にツイーターを追加したことで、ListeningやStageには無いキラキラとした質感を足すとともに、フラットな出音になるように調整しています。音場はタイトにまとめ、違和感の無い聴こえにしています。


以上が各「KL-アカラ」シリーズのちょっとしたセルフレビューです。あくまで私の感想なので、人によっては異なる印象を持つこともあるかと思います。

音というのは、個人の趣向・感覚に大きく左右され何が正解かという答えが無いものです。
その答えの無い問いに正解を与えるのは、IEMを手に取ったお客様だと私は考えるのです。
『アカラ』というコンセプトの中で3種類の音を用意したのは、同じ方向に進みながら微妙に異なる提案をしたいという思いからでした。
「KL-アカラ」シリーズをはじめ、 くみたてLabの製品が答えを見つける手助けになれば、製作者としてとても嬉しいです。

セルフレビュー第一弾はこの辺で終わりにしようと思います。
次回は、ロングセラーの「KL-サンカ」のレビューをしたいと思います。