学生の皆さんは夏休みに突入して、暇を持て余している方も多いでしょう。
— KumitateK (@KumitateK) 2017年5月6日
先のポタフェス大阪に洒落で持ち込んだKL-THANATOS、片耳24ドライバです。
THANATOS(タナトス)、それは死神…中二心をくすぐるでしょう?
時間がある方、本日はこれを作ってみましょう!
【用意するもの】
・根気、くじけない心・洒落に7万円くらい投資する財力 (片耳なら3万5千円くらい)
・WBFK-30095 を6個
・RAB-32063 を6個
・DTEC-30008 を6個(デュアルドライバなので、12機のBAがここでカウントされる)
・UV系の樹脂(たぶん中空で作るのは無理なので二液性硬化樹脂でも可)
・コンデンサ、抵抗、MMCXなどの各部品
特に最初の二つは重要で、ポタフェス後にいたずらに左耳のTHANATOSさんを召喚しようとしたら、
死神様の機嫌が悪かったのか、3つのWBFKが一瞬でお亡くなりになりました。
ちなみに『KL-THANATOS』の左耳を召喚しようとしましたが、タナトス様の逆鱗に触れたのか、WBFK3体を軽く葬っていきましたのでポタフェス大阪には間に合わないと思います(白目 pic.twitter.com/SfwBD7KO3e— KumitateK (@KumitateK) 2017年5月1日
これだけで6500円くらいがパーになってます。ここで僕は心が折れました。
なので最初の2個は非常に重要なのです。
【高域用のWBFKを6個なんとかする】
もともとNEXT5シリーズを作っている副産物で生まれたTHANATOSだったので、高域用のBAはWBFKです。
最近はやりのSWFKとかだとデュアルドライバなので、6BAにしてもスパウトの数は3つ。
ですがWBFKはシングルドライバなのでスパウトは6つです。
穴をあけたら、音導となる溝を彫り込んでいきます。6つの穴をつなげるように、
ドーナッツを思い浮かべながら彫り込みます。深さは1.5mm程度あればいいでしょう。
真ん中に明けた穴については、後程。
10mm*7mm*1mm程度の樹脂片②を用意し、上記の樹脂片に貼り付ければ(貼り付ける際は彫り込んだ面を
上にして貼り付ける。)6つのBAをまとめる音導管を構成する樹脂ユニットができます。
樹脂片②の片隅に穴をあけ、彫り込んだ音導につながるようにします。
この穴に音導チューブを接続して、WBFKの音導管のできあがり。
6つの穴にBAを固定していきますが、BAの配線は画像のようにしましょう。
なぜなら、このぱかっと空いた穴に、RAB-32063とDTEC-30000の音導管を通すからです。
何でこんなことをするかというとですね、WBFKの音導管長を短くする必要があるからです。
大体、10mm~15mm程度ですかね。
BAドライバをシェル内にいっぱいに詰め込もうとすると、 カナル部が
高域用のBAドライバで埋め尽くされてしまうことがあります。
音導管長を伸ばせば、高域用のBAユニットも、もっとスペースのある場所に収納することができます。
JH audioがやってるFreqphaseなんかは40mmくらい音導管長をとってますが、
あれは位相をそろえるほかに、実装スペースを確保する目的があるんではなかろうかとにらんでます。知らんけど。
もちろん、WBFK6個積んで、上記のような樹脂ユニットに接続し、音導管を長くすれば
わざわざWBFKの間にRABとWBFKの音導を通す必要なんてないんでしょうが、
まぁ、めちゃめちゃパクられまくってるFreqphase的なものをいまさらやるの芸がないですし、訴訟怖いですし。
RAB用の音導管とDTECの音導管は先に通しておきます。音導管の長さは実装の都合で柔軟に
変えられた方がいいので、十分に長く採っておきます(60mmくらいあれば十分でしょう。
【中域用RABの音導管を何とかする】
高域用のWBFKはなんとかなりましたが、今度は中域用のRAB×6個をなんとかしましょう。
ただ、さっきと比べてこいつらはなかなか大きい!WBFKのように前面に空間を持った
ハウジングに収めましたが、前から音導管を出そうとするとシェル内に収まりません。
そこで、KL-サンカのようにハウジングから横出しすることにしました。
ハウジングに実装して各RABを鳴らし見ると、音導から一番遠いRABの音が大きく聞こえます。
ハウジング内の空間がメガホンのような効果を持って、出口から一番遠いRABの音を増幅させているんでしょうかね。
各RABに均等に仕事をさせるにはやはり対照性を持ったハウジングを設計して、音導の位置を
対称軸上に設置すべきなんでしょうが、まぁ今回は遊びということで。
また、実際にそうしたハウジングを設計したとして、実装できるかは分かりませんしね・・・。
実装するとこんな感じ。先ほど通したRAB用の音導管をつなげます。ハウジングと音導管の間の隙間に、
WBFKとRABのネットワークを滑り込ませます。
ちなみに、各BAドライバに結線した
内部配線材は、途中でまとめています。そうしないと実装できないからです。
この辺でもまだ音が鳴る完成品になるのかまったく手ごたえがありません・・・(汗
作業時間がめちゃくちゃかかる割りに、それが一つの失敗で一瞬にして
水泡に帰す、という緊張感をもって作業をすすめましょう。
・・・なんで遊びのものにそんな緊張感を強いられなくてはいけないんですかね(半ギレ
【DTEC6個の音導を何とかする】
何とかしてばっかりじゃねーか! という皆さん。これで最後です。THANATOS様の最大にして最も凶悪な部位、12個のBAドライバが詰まった6個のDTECユニットを何とかしましょう。
DTECはデュアルドライバで、1個につき2個のBAドライバが搭載されています。
これにより、6個のDTECを積む事で、12個のBAドライバを稼げるわけです。
昨今の12~18個の多ドライバIEMは、高域用のBAドライバを沢山積む事でドライバの数を稼いでいます。
実装的な都合としては、小さいドライバで数を稼いだほうが、実装難易度は下がるわけです。
また、各人の耳の大きさなどの差異に対応しやすいです。
ただですね、でっかいBAが一杯入ってたほうがインパクト大きくないですか?
なんかアメリカっぽくないですか??
また、NEXT5シリーズがDTECを2Wayで使ったことで、周波数特性を大きく
変えられた反面、能率が下がってしまった問題がありました。
THANATOSではDTECを6個つむことで、2Way以上の帯域分けが
できるのではないかと考え、3Wayで使おうと考えました。
上記のような(主にアメリカっぽいのではないかという)理由で、DTECを6個つむことにしました。
DTECの配線ですが、こんな感じ。3Wayということで、各帯域に2ユニットずつ使っています。
また、DTECにも前面にハウジングを被せます。RABのハウジング装着時、音導から遠い
BAドライバの音圧が大きくなっていたので、その対策としてなんとなく
音導に近いBAドライバの前面容積を拡大すべく三角柱の空間にしました。しかし、この
形状ではこの問題は解決されず。やはり左右対称、対称軸上で設置するのが正解のようですね。
あらかじめ伸ばしておいた音導管を通します。RABの音導管とあわせてこんな感じ。
車のエンジン内のような様相を呈してきましたね。
ネットワークの実装を終え、MMCXコネクタを実装しました。コネクタの収まるスペースが
ないのでちょっと飛び出ます。後でコネクタ周りの形状を整えましょう。
DTEC6個がシェルからはるか飛び出てしまうので、樹脂充填でシェルを形成していきます。
なるかどうかまったく分からないIEMのシェルに、樹脂をなみなみと流しこんでいくわけです。
ならなかったらもう二度とやらないでしょうね・・・。
【完成した24ドライバ。その音は?】
樹脂充填して、もう内部のBAドライバを取り出せなくなった24ドライバIEM、THANATOS.その全貌はこちら。
まず、WBFKの音導管がこんな感じになってます。シェル用樹脂と同じ樹脂で音導管ハウジングを作ったので、
樹脂の透明度(屈折率)がまったく同じ。樹脂充填するとその境目が分からなくなり、
音導管の空洞だけがポッカリと開いているように見えますね。
その空洞の真ん中を、2本のチューブが通っています。これは狙い通り。
高域用BAの音導管の長さが13mm程度なので、freqphase的な処理になってません。
訴訟回避成功だね!
まぁ外耳道の第一カーブという、きゅっと細まったところにポッカリと空洞が開いてしまっているので、
強度的には弱いかもしれませんね。樹脂充填していることで多少はマシになっているかもしれませんが。
RABのハウジングは、耳のコンチャ(concha,耳甲介)の部分に収まり、外耳道とは180度違う方向を向いています。
それを、横出しした音導管で、カナル先端に向けていくわけです。音導管の長さも長いので、
その取り回しとあわせて多少の物理的なローパスがかかっているかな?
ほんとにエンジンみたいですね・・・
最後にDTEC部。ネットワークはヘリクスやらコネクタ付近やらいろんなところに
散らばってますが、何とか納まりました。
24ドライバ5WayのIEM、THANATOS.その特性はこちら。
肝心の音はというと・・・控えめに言ってクソ、それもそびえ立つほどに(
6個積んだDTECが思いのほかインピーダンスが下がり、音全体のバランスの中で
かなりの比重をしめています。
中高域については、こちらもRABの比重が大きく、WBFKが能率的にあまり仕事ができていません。
樹脂で固めるまではまともな測定ができないので、「ネットワークをあーすりゃよかったな」
的な反省も後の祭り。部品代だけで7万かけてもこういう結末が待っていました\(^○^)/
たとえ完成したとしても、製作者の心を折りに来るTHANATOS、恐ろしいね!
さて、そんなこんなで何とか片耳だけでも完成させたTHANATOS.
Freqphase的なものを使わない、中・高域に使ったBAドライバはシングルドライバ、
最も多くのBAを費やしたのは低域と、
最近の多ドライバIEMとは真逆の方向性を持ったIEMになりました。カスタムIEM
および高級ユニバーサルIEMシーンに一石(もしくは「うまのふん」)を投じる
何かになればこれ幸い。
ここまでお付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m