2017年8月4日金曜日

新機種紹介その2『KL-SIRIUS』 ~ドンシャリでもフラットでもない音を目指し て~

4/28より新発売しました3機種『KL-CORONA』、『KL-METEO』、『KL-SIRIUS』。

本日は4way-4Driversの『KL-SIRIUS』の詳細をご紹介します!

■『KL-SIRIUS』の音作り。ドンシャリでもフラットでもない、全帯域をバランスよく鳴らすIEM。


KL-SIRIUSは、全帯域をバランスよく鳴らすサウンドに、深く沈みこむような低域表現に重要な50Hzと、
繊細な高域表現に重要な10kHz付近にピークを持つようにチューニング。
楽曲を自然に再生しながら、超低域と超高域もきちんと表現する仕上がりになっています。
KL-CORONAと同様に、BAドライバの苦手な100Hz以下の低域を確保するために、中低域のBAドライバを2Wayとして使用しています。


BAドライバの持つフラットな周波数特性をフルに生かしながら、和太鼓など打楽器の振動から生まれる深い低域を表現できるように、
50Hz付近を持ち上げています。KL-CORONAと比べて、ローパスフィルタをかかり具合がきつく設定されているので、
よりタイトな低域の量感となっています。

高域は、刺さりが出ないよう7kHz付近のピーク感に注意しながら、爽やかで繊細な質感を表現できるよう、
10kHz~12kHz付近にピークを持つようにチューニングしました。
試作段階では、もっと高域の主張が強い華やかな音を目指したこともあったのですが、
「聴き疲れしない」、「聴く音楽のジャンルを選ばない」という2点を考え、いまの高域のバランスにしました。

全体としては、200Hz~500Hz付近を盛り上げたような低域表現、2~4kHz付近にピークを持つような高域表現とは違う、
ドンシャリでもフラットでもない、自然でありながら独特な音を奏でるIEMとなりました。


■細やかだけど自然な「4Way」という帯域分け


KL-SIRIUSのもう一つの特徴は、4Wayという帯域分け。くみたてLabのIEMでは最多の帯域分けです。
○Wayとは何か ー それは、人の可聴域(20Hz~18kHz)をいくつかに分割して考え、
分割した帯域にそれぞれBAドライバを割り振る。厳密な定義とは違いますが、IEMを設計する時に私はそんな風に考えています。
 
BAドライバでIEMを構成すると、2Wayが自然なのでは?と私は考えます。
低域用BAドライバが100Hz~2kHzを担当、高域用BAドライバが2kHz~10kHzを担当。
それ以上の高域は、カナル先端と鼓膜までの空間が左右します。

KL-CORONAの紹介でも触れましたが、BAドライバがフラットに音を出力することを考えると、
素朴にネットワークを組むならば上記の2Wayがシンプルかつ万能のようにも思えます。

SIRIUSでは、上記の2Wayに、20Hz~100Hz、6kHz~12kHzという帯域のボリュームを上げることを狙って、
帯域分けを2つ追加しました。その結果、4Wayとなったのです。


ただ、帯域分けを多くすると各クロスポイントでの位相ずれによるディップに気を付けなくてはいけません。
SIRIUSでは、各BAドライバにつながる音導管の長さを厳密に指定し、また音響抵抗の音導管内での位置を
一つずつ変えることで、全体としてなめらかな音のつながりになるようにしました。
先に示した周波数特性のように、ディップがなくフラットなカーブを描くことに成功しています。


また、意図しないピークの出現にも、最大限注意を払っています。
音響抵抗の位置によっては、「低域用BAドライバが、高域にピークを持ってしまう」、
「高域の質感がキラキラしすぎて刺さってしまう」、などの問題が起こりうるのですが、
設計にあたっては1mm単位で比較して、このような問題が起こらないように配慮しました。


■ 超高域用BAドライバを余裕をもって鳴らす。”重め”の抵抗値を用いる工夫。


6kHz以上の超高域を担当するBAドライバをどう扱うか?キンキンとした華やかさではなく、
自然でありながら「爽やか」な高域を再生するために、超高域用BAドライバには比較的
大きい抵抗値をもつ抵抗を挟んでいます。
高域の音圧を下げるには、大き目の抵抗値を挟んで能率を下げる方法と、音響抵抗によって
音圧を下げる考え方があります。

大きな入力があった時、BAドライバが余裕をもって音を出せるよう、SIRIUSでは
大き目の抵抗値を挟んで能率を下げる方法を選択しました。
これにより、いわゆる「サ行」の刺さりや、ピアノやシンバルの音などが歪むような不快な音を
避けるようにしています。



 ■4ドライバでありながら4Way.丁寧に作り上げた「ユニークで自然」な音。

 


『KL-SIRIUS』は、音導管の長さ、音響抵抗の位置、ネットワーク回路の工夫といった、
オーソドックスな手法を用いながらも、ユニークな音作りを目指しました。

ただ、CORONAやMETEOといった、パンチのある低域やきらびやかな音とは一線を画すように設計していった結果、
ドンシャリでもなくフラットでもない、自然でありながらユニークな音に仕上がりました。

もう決して、多ドライバと言えなくなった4ドライバIEM.
ただ、『KL-SIRIUS』 はその4つをフルに使い切り、設計の延長線上には12、16、20といったIEMが
あります。
4ドライバという、ドライバの数に騙されないで欲しい、そんな思いはSIRIUSにも込められています。
手前みそですが、丁寧に作った4ドライバ。
試聴機貸出サービスも始めましたので、ぜひKL-SIRUSの音を体感してください。
そのうえで、SIRIUSを愛機に選んでいただけましたら幸いです!